こんな疑問にお答えします。
この記事の内容
- 定期券の払い戻し計算方法2つのパターン(利用区間やルートを変更する場合も)
- 定期券の払い戻し手続きの方法・流れ
今、通勤や通学で使っている定期券を、何らかの理由で使わなくなったときは、払い戻しできます。
ただ、その取い扱いは独特です。
普通の感覚とはちょっと違っていて、分かりづらいです。
そこで、この記事では、定期券の払い戻しについて、経験5回の僕が、返金額の計算方法や手続きなど、できるだけ分かりやすく解説していきます。
定期券の区間・経路(ルート)の変更したい場合にも関係しますので、参考にしてください。
定期券の払い戻し計算方法【2つのパターン】
まず、定期券払い戻しの取り扱いは、ごくごく一部を除いて、JR、私鉄、地下鉄に関係なく各社共通です。
また、通勤定期券でも通学定期券でも同じです。
そして、ICOCAやPiTaPaなどICカード定期券でも、磁気カード式定期券でも変わりません。
ただ、今の定期券を払い戻すことになった事情・理由(下表)によって、返金の計算方法が2つのパターンに分かれます。
(1) | 定期券の区間をまったく乗らなくなったから(他の区間の定期券も要らない)。 | A パターン |
(2) | 乗る回数(頻度)が減って、定期券は使うほどでもなくなったから。 | |
(3) | 今の定期券の区間を、別の区間に変更したいから。 | B パターン |
(4) | 紛失した定期券が出てきて、定期券が重複したから。 |
(1)(2)は、今持っている定期券も、その代わりの(同じ鉄道会社の)定期券も要らないという場合です。完全な解約です。
⇒ここでは「Aパターン」とします。
(3)(4)は、今持っている定期券を払い戻した後も、(同じ鉄道会社の)別の定期券を使い続ける場合です。
⇒ここでは「Bパターン」とします。
鉄道会社にとって、「A」は、定期券の利用をやめられてしまうので、「哀しい」パターンといえます。
「B」の方は、別の定期券で利用を続けてもらえるので、「嬉しい」パターンです。
このため、払い戻しの返金計算は「B」の方が、ちょっと「ゆるい」です。
とは言え、現実は「A」も「B」も、あなたが思っているほど返金されません。
最悪、返金ゼロということもあります。返金額に関して、あまり期待しない方がいいです。
それでは、各パターンの返金計算について解説していきます。
定期券の払い戻しは、「A」パターンも「B」パターンでも、定期券の購入価格(定期代)から有効期間の経過した日数分にあたる運賃を差し引いて計算します。
例えば、4月1日から使える3ヶ月定期券を5月6日に払い戻す場合、返金額は、4月1日~5月6日(36日間)分の運賃を、買ったときの定期代からマイナスしたものになります。
実際のところは、払い戻し手数料を取られますが、いたって単純です。
では、何がややこしいかというと、「経過分の運賃」の出し方(取り扱い)です。
普通に考えると「日割り計算」するようにと思いますが、実は定期券では違うんです。
しかも、「A」パターンと「B」パターンとで異なります。
以下、それぞれがどうなっているのか、みていきましょう。
【Aパターン】定期券をもう使わない場合の払い戻し(完全解約)
まず、「A」パターンの払い戻しです。
この場合、経過した期間分の運賃は、日割りではなく「月割り(月単位)」で計算します。
1か月未満の場合は、1か月とみなします。
例えば、3ヶ月定期券の有効開始日から1か月と1日目に払い戻しするときは、2ヶ月使ったことになります。
1ヶ月と20日目でも、同じ2ヶ月です。
4月1日始まりの3ヶ月定期券の場合、5月1日に払い戻ししても、5月30日に払い戻ししても経過は2ヶ月間として取り扱われます。
これが1ヶ月定期券だと、1日でも経過すると1ヶ月使ったことになるので、返金は0。
ただし、例外として、有効期間の開始日から7日目までに、払い戻しの申し込みをした場合に限って、「日割り」計算してくれます。
定期券の区間を、1日に1往復(2回乗車)したものとして、経過日数分の普通運賃を定期代から差し引いた分を返金してもらえます。
買い間違いなどで、買ってすぐに解約・払い戻しするときは、7日以内に手続きしましょう。
以上のことから、次の場合は返金がありません。
1ヶ月定期券 | 有効期間の開始日から、8日以上経過したもの |
3ヶ月定期券 | 有効期間の開始日から、2か月と1日以上経過したもの |
6ヶ月定期券 | 有効期間の開始日から、5か月と1日以上経過したもの |
そして、返金額の具体的な計算式は次のようになります。払い戻し手数料は220円です。
有効開始日からの経過時間 | 返金額の計算方法 |
有効期間の開始前 | 購入価格-手数料 |
開始日より7日以内 | 購入価格-(区間の普通運賃×2回×経過日数)-手数料 |
開始日より8日~1ヶ月 | 購入価格-1ヶ月定期代-手数料 |
開始日より1ヶ月1日~2ヶ月 | 購入価格-(1ヶ月定期代×2ヶ月)-手数料 |
開始日より2ヶ月1日~3ヶ月 | 購入価格-3ヶ月定期代-手数料 |
開始日より3ヶ月1日~4ヶ月 | 購入価格-(3ヶ月定期代+1ヶ月定期代)-手数料 |
開始日より4ヶ月1日~5ヶ月 | 購入価格-(3ヶ月定期代+1ヶ月定期代×2ヶ月)-手数料 |
具体例として、JR「大阪駅~三ノ宮駅」の6ヶ月通勤定期券を払い戻しした場合をみてみましょう。
払い戻し(返金額)の例
【JR大阪駅~三ノ宮駅、6ヶ月通勤定期券】
通勤定期代(購入価格) | 1ヶ月:12,830円 |
3か月:36,620円 | |
6か月:69,470円 | |
普通運賃 | 片道:420円 |
払い戻し手数料 | 220円 |
有効開始日からの経過期間 | 返金額 |
有効期間の開始前 | 69,470円-220円=69,250円 |
開始日より7日目 | 69,470円-(420円×2回×7日)-220円=63,370円 |
開始日より8日~1ヶ月 | 69,470円-12,830円-220円=56,420円 |
開始日より1ヶ月1日~2ヶ月 | 69,470円-(12,830円×2ヶ月)-220円=43,590円 |
開始日より2ヶ月1日~3ヶ月 | 69,470円-36,620円-220円=32,630円 |
開始日より3ヶ月1日~4ヶ月 | 69,470円-(36,620円+12,830円)-220円=19,800円 |
開始日より4ヶ月1日~5ヶ月 | 69,470円-(36,620円+12,830×2ヶ月)-220円=6,970円 |
このように、返金額は買った時の定期代や残りの有効期間を考えると、少ないです。
【Bパターン】区間を変更、紛失した定期券が出てきた場合の払い戻し
次に「B」パターンの払い戻しです。
この場合、経過した期間の運賃は「旬割り(旬単位)」で計算します。
この「旬(じゅん)」とは、あまり聞かないと思いますが、「10日間」を指します。
つまり、10日単位で計算するということです(1旬=10日)。
「B」パターンが適用される事情のひとつは、引っ越しや異動などで、定期券の区間や経路(ルート)を変更する場合です(鉄道会社は変わらない)。
この時の手続きは、今の定期券を解約・払い戻しして、そして新しい区間、経路の定期券を買い直すことになります。
これは、定期券にそもそも区間や経路を変更するという取り扱いがないためです。
利用者からすると、定期券を解約する気はなく、利用区間を変えたいだけなのに、得でもない払い戻しされて、なんか腑に落ちません。
鉄道会社としては、定期券を続けてくれる大事なお客様です。
そこで、利用者の負担を少しでも軽くするため、払い戻し計算は「A」パターンの「月単位」ではなく、ちょっとマシな「旬単位」を適用するというわけです。
その返金額の計算式はこちらになります。
「定期代の日割り額」は、シンプルに1ヶ月=30日として計算します。
つまり1ヶ月定期券は30日、3ヶ月定期券は90日、6ヶ月定期券は180日です。これらの日数で定期代を割って出します。
また。払い戻し手数料は、220円です。
ただ、定期券の有効期間が残り10日未満になると、返金はありません。
具体的に、JR「大阪駅~三ノ宮駅」の6ヶ月通勤定期券を例でみてみましょう。
払い戻し(返金額)の例
【例】JR「大阪駅~三ノ宮駅」の6ヶ月通勤定期券の場合
- 定期代(購入価格):69,470円
- 定期代の日割り額:386円(69,470円÷180日=385.94円)
- 有効期間:4月1日~9月30日
- 払い戻し申し込み日:8月5日
- 経過日数:4ヶ月と5日(128日)※4月1日~8月5日
- 経過旬数:13旬(128日÷10日=12.8旬)
- 返金額:69,470円-(日割り386円×10日分×13旬)-手数料220円
=19,070円
2つ以上の鉄道会社の路線をまたぐ「連絡定期券」で、1社だけ解約したいときも、この返金計算になります。
例えば、大阪メトロと阪急電車が1枚になった連絡定期券で、阪急だけを解約することはできません。
定期券自体を解約(払い戻し)して、大阪メトロだけの定期券を新たに買う手続きになります。このときの払い戻しは「旬単位」で計算します。
あと、「B」パターンの払い戻しは、失くした(盗まれた)定期券が、新たに定期券を買った後で出て来て、重複した場合にも適用されます。
重複とは、有効な定期券が手元に2枚ある状況です(そのうち、1枚は不要)。
定期券の払い戻し方法(手続きの流れ)
ここでは、実際に払い戻しを受ける手続きの流れをまとめました。
(1)手続きに必要なものを用意します。
定期券の払い戻しには、以下のものが必要になります。
- 払い戻しする定期券
- あなたの公的な身分証明書・本人確認書類(健康保険証、運転免許証、学生証など)。
- クレジットカード払いで買った場合は、その際のカード。あれば「お客様控え」も。
- 通学定期券で「区間変更」する場合は、学校が発行する「通学証明書」。
定期券の払い戻しは、落としたり盗まれたりした定期券が、他人によって手続きされないように、買うときよりも本人確認が厳格です。
クレジットカード払いで買った場合は、その同じカードが必ず要ります。
カードの暗証番号(4ケタ)も必要になります。分からないときは、あらかじめカード会社に確認しておきましょう。
ちなみに、カード決済した定期券には、「C制」「カード」「カ」といった文字が印字されてています。
あと、紛失した定期券が出て来てときの払い戻しは、新旧両方の定期券が必要です。
【代理人の手続きも基本OK】
定期券の払い戻しは、その持ち主(名義人)でなくても、基本的に代理人でもできます。
その際は、次のものが追加で必要です。
- 代理人の身分証明書・本人確認書類
- 名義人と代理人との関係が分かるもの(委任状など)
ただし、クレジットカード払いで買った定期券の場合は、代理人手続きはできません(カードの名義人本人のみ)。
※代理人が手続きする際、定期券名義人の身分証明書は「写し」でも構いません。
※鉄道会社によっては、一部のIC定期券で代理人手続きができないことがあります(例:近鉄のICOCA定期)。気になる場合は事前に確認ください。
(2)払い戻し場所に出向きます。
払い戻しに必要なものが揃ったら、さっそく行動開始です。
向かうは、各鉄道会社の定期券発売所(JRは「みどりの窓口」)です。そこで、払い戻しを申し込みます。
払い戻しを申し込むと、定期券は、その後から使えなくなります(使用終了)。
過去の日付や先の日付での払い戻しはできません。
また、手続きする発売所は、鉄道会社が同じなら、特に買ったところでなくても構いません。
ただし、2社以上の鉄道会社やバス会社の定期券を1枚にまとめた「連絡定期券」を、クレジットカード払いで買った場合は、買った会社の方でしか手続きできません。
例えば、JRと阪急電車の連絡定期券をJRの窓口で買ったのなら、JRの方で手続きします。
(3)払い戻しを申し込み、返金を受けます。
定期券発売所に着いたら、係員に「払い戻し請求書」をもらいます(窓口に置いてある場合も)。必要事項を記入したら、定期券や身分証明書などと合わせて係員に提出します。
払い戻し請求書に、理由を選択する欄がありますが、特に「B」パターンの場合は、係員に言い添えると確実です。
区間・経路変更の場合は、同時に新しい定期券の購入手続きも行います。
あとは、計算を待つだけ。問題が無ければ、5分もかからず完了します。
現金で買った定期券でしたら、その場で現金で返金されます。クレジットカードで買ったものは、後日カード会社を通して口座に入金されます。
区間や経路の変更の場合は、新旧の定期券の差額を計算して、過剰があれば返金されて、不足していたら、その分を支払います。
※クレジットカードで買った定期券を現金で払い戻してもらうことはできません。口座への入金日は、カード会社の取り決めによります。
この払い戻しに出向くときは、
払い戻しをしたら、その時点から定期券は使えなくなる。
ということを確認しておきましょう。
払い戻しした当日1日は、理屈としては定期券は使えるはずですが、実際は定期券は回収されて、その後からは使えなくなります。
もし出勤の途中で払い戻しすると、帰りは切符を買ってということにもなりますので、タイミングに注意が必要です。
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